こんにちは、Kei(@s21cd4869)です。
大会は26日目。
素晴らしい戦いが毎日のように繰り広げられてきた
ロシアワールドカップもついにファイナル。
この一戦で夢の祭典も幕を降ろす。
ファイナルに挑む両チームの構成
フランスは [4-2-3-1] 。ジルーのワントップ。トップ下にグリーズマン、ポグバとカンテのダブルボランチ。
クロアチアは [4-1-2-3] 。アンカーにブロゾビッチ、その前にラキティッチとモドリッチという構成。右にレビッチ、左にペリシッチ、真ん中にマンジュキッチ。左サイドバックにストリニッチ。
立ち上がりに見られたこのゲームの狙い
立ち上がりはクロアチアがボールを保持しながら流れを掴んでいく。クロアチアは左サイド(フランスの右サイド)からいくつかチャンスを作る。エンバペが守備に戻らないところを意図的に攻めるという狙いが感じられた。
フランスはモドリッチを自由にプレーさせないようにカンテがモドリッチにしつこくプレッシャーをかけていた。そのプレッシャーを避けるため、モドリッチは右サイドでボールを受けるシーンが多く見られた。両チームの狙いがよく出ていた立ち上がりだった。
疑惑のプレーと判定
17分、自陣深くでエンバペからボールを奪ったペリシッチが縦に繋ごうとするが、このパスがミスになりヴァランの足元へ渡ってしまう。ヴァランからパスを受けたグリーズマンはワンタッチで前を向いたところで倒れると、マッチアップしていたマンジュキッチがファールを取られ、フランスは絶好の位置でフリーキックを獲得する。
このシーンをよく観ると、ブロゾビッチはファールを犯していないように見える。明らかにグリーズマンのダイブだったと思う。グリーズマンが倒れるモーションに入るまでにブロゾビッチはグリーズマンに触れてすらいなかった。主審のポジションからは、それが見えていなかったのではないか。クロアチアの選手はファールを取る笛がなった瞬間、主審に抗議をするも判定は変わらずフランスのフリーキック。
VARがこういった場面にも適応されることがあれば、間違いなくグリーズマンにイエローカードが出ていただろう。グリーズマンがワンタッチで前を向いたプレーは素晴らしいものだっただけに、このダイブはとても残念だった。これもマリーシアと言われればそうかもしれないが、主審を欺くようなプレーはやってほしくない。
このフリーキックから最終的にはオウンゴールでフランスが先制点を手にした。結果的に、この判定はこのゲームを大きく左右することとなった。
クロアチアのトランジション
今大会を通して、クロアチアの切り替えの早さは目立っていた。それはファイナルも例外ではなかった。前線の選手全員がそうだったのだが、特にモドリッチのそれは突出して素晴らしかった。
相手の芽を摘むだけでなく、攻撃のための守備。ネガティブ・トランジションからポジティブ・トランジションへ。マイボールを失った瞬間に攻撃が始まる。今大会のクロアチアにはチームとしてその意識が感じられた。それがファイナルまで勝ち進んでこれた一つの要因だろうと思う。
美しかった同点ゴール
28分、ペリシッチのドリブル突破にたまらず足を出したカンテに倒され、クロアチアがフリーキックを獲得する。キッカーはモドリッチ。直接ゴール前に入れ流のではなく、モドリッチが助走に入ったのと同時に、右サイドをヴルサリコが駆け上がる。モドリッチは駆け上がってきてフリーのままのヴルサリコにボールを送り、ヘディングで中に折り返す。
その後、マンジュキッチ、ロブレンと高さで競り勝ちボックス内の中央にいたヴィダの足元へ繋がる。ヴィダはペナルティアークのところにいたペリシッチへダイレクトで落とした。シュートモーションに入ろうとするペリシッチの前にはカンテがしっかりと寄せていた。ペリシッチはワンタッチで左へ持ち出す。
このワンタッチで勝負は決まったといっても過言ではないだろう。そのワンタッチでディフェンスを避け、コースを作りながら得意の左足でシュートを打てる絶好の位置へボールを置くことができた。
計算されたフリーキック。ヴルサリコのところでもう少し綺麗に折り返す想定だったとは思うが、それにしても、モドリッチが助走に入ったその瞬間からの全てが美しかった。チームとしてのアイデア、ヴルサリコのランニング、モドリッチのキックの精度、マンジュキッチとロブレンの頑張り、ヴィダの次のプレーへの予測、そしてペリシッチのアイデアと決定力。いくつもの要素が重なって生まれた素晴らしい得点だった。
再びの疑惑の判定
37分、フランスのコーナキックのボールがペリシッチの手に当たり、VARで主審が確認をした上でペナルティキックの判定。この判定もまた如何なものかと思う。確かに手に当たってはいたが、その後のプレーでフランスのチャンスを明らかに妨げるものでもなかった。さらに言えば、故意に手で触れたプレーではなかった。
前で選手が重なったことでボールが見えず、見えないところから出てきたボールであったことを鑑みればこの判定はクロアチアにとっては不運なものだった。
先制点に繋がったフリーキックを与えたファールの判定、そして、このペナルティキックの判定。この2つの判定が大きくゲームを左右したのは明らかだった。
クロアチアにとってこのゲーム最大の敵の乱入
前半は2-1、フランスリードで後半へ。52分、フランスはクリアボールをジルーがポグバへつなぎ、ディフェンスの裏へロングスルーパスを出す。エンバペがスピードでディフェンダーを振り切り、フィニッシュまで持ち込む。クロアチアのGKスパシッチが防いだボールはブロゾビッチの元へ。
右サイドのヴルサリコを経由し、ボールを受けたモドリッチはラキティッチへサイドを変えるボールを送り、クロアチアの攻撃が加速すると思われたが、ここで観客席からピッチ内へ乱入者が現れ、ゲームは一時ストップせざるを得ない状況に。
後半開始から、クロアチアがゲームの流れを掴んでいて、このシーンでも良い形でカウンターに入っていた。ピッチ外の人間によって、ゲームの流れは変えられ、チャンスも潰されてしまった。ワールドカップのファイナルという夢の舞台でのゲームに水を差す行動だった。
2つの疑惑の判定に続いて、またもクロアチアにとって不運な事象が続いてしまった。クロアチアの敵はピッチ内だけでなく、ピッチ外にまで存在した。
後日、乱入してきたのは「プッシー・ライオット」というバンドのメンバーで過去にプーチン大統領の再選に反対し、過激な抗議活動をしていたようだ。今回のピッチへの乱入もその活動の一環だったようだが、そんなことのためにフットボールを汚さないでもらいたい。そして、ワールドカップのファイナルを利用しないでもらいたいと強く思う。
侵入者の一人に対して、クロアチアのDFロブレンが掴みかかっていたが、その気持ちは分かる。夢の舞台で水を差されれば当然の対応かもしれない。
デシャン監督の下した一つの決断
54分、フランスのデシャン監督はカンテを下げ、エンゾンジを投入する。早い時間帯での決断。クロアチアはカンテのところを避けながら、フランスディフェンスの裏のスペースを意図的に狙っていく。カンテにセカンドボールを奪取させないような攻撃をし、カンテに付かれていたモドリッチも下がって受けることや、サイドに流れて受けることでそのプレッシャーを回避することで、カンテを無効化した。
そんな一連の流れから、デシャン監督はカンテを下げて、エンゾンジを投入するという決断を下した。カンテを無効化しながら、クロアチアペースでゲームは進んでいたが、それに対抗する策をデシャン監督は持っていた。
カンテは良くも悪くも動きすぎる選手。逆にエンゾンジはどっしりと構えるタイプの選手。この交代から流れを取り戻した結果、ポグバのゴールが生まれることになる。
強かだったフランスが優勝。クロアチアは美しく散る
終わってみれば、4-2。フランスが98年大会以来の優勝を果たした。昨年、グループリーグの組み合わせが決まってすぐに、グループリーグの展望と今大会の優勝予想をエントリーとして書きました。優勝の予想は惜しくも当たりませんでしたが、今大会のクロアチアは素晴らしいチームだった。そして、素晴らしい戦いを披露した。
フランスは2018年大会の優勝国として記録に残る。準優勝のクロアチアはそのサッカーに魅了された人々の記憶に永遠に残る。僕もその中の一人だ。
今大会のフランスの戦い方は、“アンチフットボール”と言われて、批判されているが、これもサッカーの一部だと思う。しかし、今大会のフランスのサッカーが面白かったかと問われれば、首を縦には振れない。何を持って面白いかは観る人々、それぞれの価値観によるものであるが・・・。
今大会、フランスが優勝できた要因の一つにはデシャン監督の采配があった。エンバペを最大限活かすためのマテュイディの起用。流れを読んだ上で、ゲームの途中で切るカードの的確さ。監督の力量が大きかったフランスの優勝だったように思う。
この交代の意図と狙い、交代前後での違いはもっと検証されてもいいと思うし、サッカーメディア(主にテレビなど)はもっと取り上げてもいいのではないかと感じる。カッコいいサッカー選手ランキングなんかやらなくていいから、もっと有益なプログラムをやってほしいと思う。メディアの成長も日本サッカーには間違いなく必要不可欠。
異論無きゴールデンボール
今大会のMVPには、クロアチアのMFルカ・モドリッチが選ばれた。グループリーグからチームを牽引し、3試合の延長戦でもほとんどの時間プレーし、チームの為に誰よりも走り、戦っていたその姿は素晴らしかった。MVPはモドリッチ以外考えられない。このMVPの選出には異論はないだろう。
- MVP(ゴールデンボール) ルカ・モドリッチ
- シルバーボール エデン・アザール
- ブロンズボール アントワーヌ・グリーズマン
- 得点王 ハリー・ケイン
- 最優秀若手 キリアン・エンバペ
- 最優秀GK ティボ・クルトワ
- 優勝 フランス
- 準優勝 クロアチア
- 3位 ベルギー
2022年カタールW杯への戦いが始まった
ファイナルの終了のホイッスルが鳴ったその瞬間、同時に4年後のカタール大会への戦いが本格的に幕を開けた。長いようで短い旅が始まった。8年後、そして100年後を見据えた戦いが。正解はあるようで、ない。それでも解答を出さなければならない。挑戦して、分析する。それ以外の近道はないのだから。ワールドカップトロフィーを掲げるイメージを持って。
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