国内組で臨んだ昨年のE-1 EAFFに続き、またしても負傷での交代となってしまった。ここ数年、怪我が多く、それを改善するための手を打っていたにも関わらず、またしても同じ状況になった。本大会の23人の枠に入っていくにあたって、この怪我の多さはネックになってくるだろう。
しかし、それがあっても呼びたくなる。そんなプレーを負傷交代するまでの34分間で披露した。今回の欧州遠征以前の戦い方は、中盤に守備に長けた選手を配置して、奪ったボールを縦に速く進めていくような戦い方だった。
しかし、今回の招集メンバーの顔ぶれは、それとは違った。長谷部、山口、大島、柴崎、森岡。長谷部と森岡以外は、パスでリズムを作り、ゲームメイクをできる選手が名を連ねた。メンバー発表の会見を観ていたが、この人選は意外だった。(今までの戦い方にハマる選手ではないため)
マリ戦、長谷部とダブルボランチを組んだのは大島僚太。彼一人が中盤に入るだけで日本代表のサッカーにリズムが生まれる。長谷部、山口、井手口を配置した試合では、日本のサッカーにはメリハリが全くなかった。僚太が一人入るだけで、リズムを生むだけでなく、メリハリがついていた。速い縦パスを前の選手に当て、攻撃のスイッチを入れていたのも僚太だった。
ディフェンスラインの選手や長谷部がボールを持ったときに、僚太が相手ディフェンスからスッと離れて、ボールを呼び込むシーンがいくつかあったが、ディフェンスラインの選手も長谷部もその動きを見れていなかったし、そこに出せるセンスが皆無だった。フロンターレならば、出てくるパスが代表では出てこない。フロンターレのフリーの定義と代表選手のフリーの定義が根本的に異なる。僚太が代表に合わせるべきなのか、代表が僚太に合わせるのか。即席で集まるチームでは難しさがある。現状は僚太が合わせるしかない。
前半の途中で僚太に対して、監督から「もっと寄せろ」という声が飛んでいたようだが、この声に関しては、間違っていると思った。個で攻めてくる相手に対しては、寄せるより、少し距離を取りながら守るほうが賢いはずだ。実際、僚太は寄せずに距離を取りながら、パスコースを消したり、あえて空けることでパスを誘い、マイボールにしていた。デュエルにとらわれるがあまり、他の守備方法ではダメだという考えになってしまっているのではないかと感じた。日本より一回りも二回りも大きい選手とフィジカルで戦うやり方は愚かだ、体を当てずに頭を使う守備でマイボールにできるなら、その方が良いはずだ。あの指示の真意はわからないが、デュエルに固執しすぎているのではないかと思う。
僚太がピッチを後にしてから、リズムは生まれず、攻撃のスイッチは入らず、ビルドアップはミスばかり、ディフェンスラインから雑なロングボールを放り込むだけの単調なサッカーが続いた。ピッチを後にしてから、後半は特に僚太の不在が顕著に表れていた。後半途中から投入された小林悠が前線で何度も動き直し、ボールを呼び込むも、同じ途中投入された中島翔哉以外は誰も小林を見れていなかったし、そこにパスが出てこなかった。
僚太がプレーしたのは、2試合の内の1試合、90分の内の34分間だったが確かに存在感を示した。僚太がピッチにいた34分間と、僚太がピッチを後にしてからの60分間では、日本のサッカーは180度違った。
途中投入からインパクトを残した中島翔哉がいなければ、最も評価を上げたのは大島僚太だったと思う。彼のプレーをみられていた人はどれくらいいただろうか。選手もサポーターも。
本大会に向け、怪我の多さはネックになってくるだろう、しかし、それでも彼を呼ぶべき理由がある。指揮官が語ったように「日本で今、一番良い選手」が大島僚太だ。そして、新たな日本代表の"心臓"になれる選手が大島僚太だ。
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