作曲家・杉山勝彦さんとの出会い
杉山勝彦さんという作曲家との出会いは、2013年。上田和寛、USAGI(現TANEBI)での活動を知ったことがきっかけで、ストリートや、その他のお会いする機会があった際に、何度かお話をさせて頂きました。
ただ、アーティスト活動以前から作曲家として活動されていたことは正直知らなかった。USAGIとの出会いを機に上田さんのソロ時代の曲や、杉山さんの作品をほぼ聴き、作品の特徴を捉え、自分なりの分析をした。
数々のアーティストに楽曲を提供
AKB48や乃木坂46、嵐、私立恵比寿中学、家入レオなど数々のアーティストに楽曲を提供している。乃木坂46のファンの方などには、数年前から名前が知られていたが、最近では、一般の方々にも名前が知れ渡りつつある。
乃木坂46のイメージを具現化させ、グループに色を付けた異質な曲
代表作といえば、乃木坂46に提供した楽曲だろうと思う。一つ選ぶとすれば、「君の名は希望」。他のアイドルの楽曲のキラキラした感じや、キャピキャピした感じというか、アイドルっぽさとは一線を画すアプローチの作品だ。
もちろん、乃木坂がデビュー当初から清楚でおしとやかなイメージをコンセプトとして来たことも大きい。デビュー当初からずっと、フレンチポップスをやって来たが、制服のマネキンで流れが変わり、次に君の名は希望がある。アイドルらしいオケではなく、ピアノの戦慄を主としたこの楽曲が“乃木坂らしさ”に非常にマッチしたのだと思う。
そして何より、お風呂上がりに何となく弾いて生まれたというイントロのメロディがとても美しい。曲の構成も、Aメロ→Bメロ→Aメロ→サビという型破りで異質な曲でもある。そして、結果的にこの曲が「乃木坂らしさ」というイメージを決定付けたと行っても過言ではない。作曲家の役割は、ただ楽曲を作り、提供するだけではないということに気付かされる。
あの曲があって、この曲がある
乃木坂46の初のミリオンを達成した「サヨナラの意味」。この曲は、「君の名は希望」があったからこそ存在する楽曲である。イントロは試行錯誤した末に発表されたカタチになったという。この試行錯誤をするということが大切だと仰っていた。これは人生のどんなことにも当てはまる事なのではないかと思う。
ライブのヒトコマから広がった「まっすぐ」
私立恵比寿中学の「まっすぐ」という曲。製作時期にライブに足を運び、その中でメンバーがカラオケでMr.ChildrenのHANABIを歌うというMCからヒントを得て製作されたそう。また、彼女たちが子供から大人になっていく段階にいるという現在の状況を反映させた楽曲。彼女たちだけに落とし込んむだけではダメで、ライブのファン層のことも考えてこの曲は作られている。
“天才”とは
数々の楽曲を世に送り出して来た中で、杉山さんは“天才”と呼ばれる様になる。インターネットで杉山勝彦と打つと予測ワードに天才と出てくる様にもなったという。杉山さん曰く、自分は決して天才ではない。それは、幼少期から今でもそうで、子供の頃には、勉強など、何をやっても兄には勝てず、落ちこぼれくらいの認識だったそうだ。
それが、今では世間では“天才”と呼ばれている。今どんな状況にある人でも、天才になることは出来ないが、将来、誰かに「お前は“天才”だ」と言われる様になることは出来ると杉山さんは言う。一つのことに情熱を傾け、努力するということ。その積み重ねが、今、“天才”と呼ばれる杉山勝彦を作り出している。
楽曲を作る上で大切にしているもの
杉山さんのお話を聴く機会がこれまでに何度かあり、様々なお話を聴かせていただいた中で、テーマとイメージを大切にしている方だということが伝わってきた。楽曲に関しては、テーマを重要視していて、作曲だけの依頼だとしても、必ず歌も入れた上で提出するそうだ。それによりイメージをより伝えられるという趣旨の話をしていた。
また、楽曲を提供するアーティストのイメージや立ち位置、目指しているところがどこなのかなど、一見作曲とあまり関係がなさそうなところにまで目を向け、楽曲を作るそうだ。ただ、楽曲提供をするだけでなく、その楽曲が与える影響まで想定しているのだと考えると、より一層凄さが伝わるだろう。
ミリオン作品を産んでも、冷静に物事を捉えている
音楽業界も最近は難しい時期にある。そんな中で、ミリオン作品を産み、周りから「凄いですね」と言われることがあったという。しかし、杉山さんは「凄くないんですよ、これは謙遜ではなくて。」と仰った。
「今、音楽だけでモノが売れる時代なのかって言ったら、絶対そうではないんですよ、それは自分のグループ(TANEBI)でやっているから分かる。ジャンルだったら、音楽で自分のグループ(TANEBI)だって、売れまくっているわけじゃないですか。そうではないという現実がある。」とどこか客観的に、そして冷静に現状を捉えている。100万枚売れたことにおいて、自分が出来たことは1%未満だと仰った。
メロディに名前が書いてある
クレジットを見なくとも、曲を聴けば、杉山勝彦作品であることがおおよそ分かる様になって来た。曲のいたるところに色付けが為されていて、細部まで想いが詰まっている。曲に自分らしさを入れるということは、難しいところではあるけれど、それがなければ存在価値がなくなってしまうと思う。杉山作品は、まるでメロディに名前が書いてあるかのようだ。それでいて、型を破ることも出来る。それが魅力だと思う。
実は、記事自体は途中まで書いていたのですが、書き切るタイミングがなく、中途半端なままになっていたのですが、作曲賞受賞を機に書き切ることに。
杉くん、レコード大賞、
作曲賞受賞本当におめでとうございます。
TANEBIでのご活躍も期待し、これからも応援させていただきます。