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【ロシアW杯】可能性を天秤にかけ、日本チームの力のなさを認めた決断。「The Review」『日本vsポーランド』

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Russia World Cup




 こんにちは、Kei(@s21cd4869)です。


大会は15日目を迎えた。
日本は第3戦、vsポーランド戦に決勝トーナメント進出をかけて挑みました。
その日本の第3戦を振り返っていきたいと思います。


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Group H




 日本は引き分け以上で、自力での決勝トーナメント進出を自力で決められるという大一番。一方のポーランドは、2連敗でグループリーグ敗退が決定している中での対戦。




 



○前半


 日本はこれまでのスターティングメンバーを6人入れ替え、 [4-4-2] を採用。2トップの岡崎と武藤が縦関係になるようなイメージ。1戦目や、2戦目のように、前線で納める形ではなく、相手ディフェンスの裏を狙っていくような狙いがあるようには感じた。


疲労や、暑さを考慮してターンオーバーの意味もあったとは思うが、突破が決まっていない以上不可解でリスキーなスターティングメンバーだった。これは2連勝して、決勝トーナメント進出が決まっているチームだけが出来ることだ。


 ポーランドのビルドアップのところを狙っているようなプレッシャーのかけ方が立ち上がりから見られた。相手の4バックはセンターの2枚を残して、両サイドバックが高い位置を取る形でのビルドアップ。岡崎と武藤の2枚で中央のコースを消しながら、宇佐美と酒井高徳の両サイドの2枚が相手のサイドバックを見るような形。ビルドアップのところの守備の形を見ると、[4-4-2] の狙いが垣間見えた。


長谷部と柴崎がボランチでコンビを組むときには、長谷部が、最終ラインに落ちて、ビルドアップに参加する形をとっていたが、この日は、山口と柴崎のコンビ。柴崎が最終ラインに落ちて、ゲームを落ち着かせるようなはたらきをしていた。 レヴァンドフスキをはじめとするポーランドの前線の選手は、そこまで日本が最終ラインでボールを持っているときに、プレッシャーにこないので、余裕を持って繋げていた。


前半は、日本の方がチャンスを作っていたが、そこまで決定的なシーンは生み出せなかった。0-0で前半を折り返す。もちろん、前半のうちに先制点を奪いたかっただろうが、ここまでは想定内だったとは思う。



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4-4-2




○後半



 後半開始早々、岡崎が右足首を負傷し、大迫と交代。システムは変えず、[4-4-2] のまま。 人数をかけて攻めた際のリスク管理は大きな課題。カウンターへの対応もルーズだった。センターサークル辺りなら、潰す方が良いはず。入れ替わられたら終わりなんだから。


先制点を許したセットプレー。ファールを与えた山口のプレーも軽率であったと言わざるを得ないし、フリーキックの守備もマークが曖昧だった。


65分、宇佐美→乾
山口に変えて大島僚太を出したいところ。山口は日本が最終ラインなどでボールを持っているときに、ボールを受ける気が全くなかった。柴崎の孤軍奮闘といった感じで、中盤もチームも全く機能していない。僚太なら、この状況を変えられるはずだと思いながら、観ていた。


82分からは、このまま0-1で試合を終わらせるための時間稼ぎ。この会場も、他会場もこのままタイムアップ。日本はグループ2位で、決勝トーナメント進出を手にした。



 



 




これまでの2試合とは全く別のチーム



 これまでの2試合が良かった訳ではないが、6人を入れ替えたことで全く別のチームの戦いだった。プレーモデルもない、同じ絵も描けていない、今日だけに限らず、改めて即席で作られたチームであることを実感した。今日の戦いを良しとしている人の意見も見かけるが、本当に結果だけが全てなのだろうか。大博打に出て勝てばそれでいいのだろうか。この国のサッカーにはプライドがないのか。魂はないのか。




モチベーションが高かったはずのサブ組



 前の試合と変わって、槙野、宇佐美、武藤、岡崎、酒井高徳、山口がこのゲームではスターティングメンバーで起用された。この起用に期するものもあったはずだ。しかし、槙野、山口、宇佐美に関しては満足のいくパフォーマンスではなかった。



槙野智章


 槙野は守備での判断が悪く、マークもルーズだった。カバーリングやカウンターへの対応も良くなかった。昌子のパフォーマンスを考慮すると、ベルギー戦で起用される可能性は低そうだ。


山口蛍


 山口は、覇気が感じられなかったし、中盤で受けるための動き出しも全く見られなかった。さらには不用意な縦パスを入れるばかりで、持ち味の粘り強い守備も影を潜めた。失点したセットプレーを与えた軽率なファールもあった。どうして途中で変えないのか分からないレベルのパフォーマンスだった。


宇佐美貴史


 宇佐美に関しては、攻撃ではアクセントを付けていたが、守備での強度、運動量は圧倒的に足りない。ターンオーバーでの出場であれば乾を出さずに済むくらいの頑張りを見せなければならなかったはず。(失点したという状況もあったが)長年の課題がまたしても露呈した印象を受けた。この課題を本気でなんとかしないと欧州1部リーグでは満足な結果を得られないだろうと思う。彼に一番欠けているものは、ボールへの執着心かもしれない。


酒井高徳


 酒井高徳のサイドハーフでの起用は正直、意図が分からなかった。攻撃でも、守備でも目立ったプレーはなかった。攻撃では圧倒的にアイデア不足。サイドハーフとしての動きも慣れないせいかぎこちなかった。


武藤嘉紀


 6人の中で一番「やってやろう」という気持ちが感じられたのは武藤だった。。前半のゴール前でボールを奪ってからのシーンはそれが現れていた。宇佐美に出して欲しかったが、フォワードなら自分でいくべきだと思うので。ただ、チームとして武藤の良さは出ていなかった。


岡崎慎司


 岡崎に関しては、圧倒的にコンディションが悪かった。怪我を抱えていることは知っていし、大丈夫だという判断だったのだと思うが、その選手をなぜスタートから使うのか。今日は勝ちに行く試合だったはずだ。




手にした切符をどう使うのか



 結果として、先へ進む権利を得たのは事実だ。プライドを持ち、魂のこもった素晴らしい戦いをしたが、残念ながら3試合でロシアを去ったチーム、去らなければならないがいる。


日本とは比べ物にならないほど、積み重ねたものがあり、プレーモデルも、ヴィジョンも野心もあったはずだ。それでも大会を去らなければならない。そんな素晴らしい戦いをしたチームに恥じない戦いを見せてもらいたい。


不本意な決断をしてまで、先に進むことに固執した。ワールドカップとはそういうものだ。手に入れた90分を悔いのないように戦い抜いてもらいたいと心から思う。





今大会は先がある。しかし、このままでは日本サッカーには先(未来)がない。



全てを否定している訳ではない。選手には頑張ってもらいたいと思っている。



 

終盤の議論をする前に、フォーカスするべき82分



 結局、82分までに試合を決められなかったことが全て。前半で試合を決めるくらいの勢いを持って入るべきだったが、それができなかった。終盤のゲームの終わらせ方にフォーカスするのも一つだけど、まず、それまでの82分にフォーカスするのが先だろう。


2点目を決められてしまえばそこでジ・エンドなので、難しい選択ではあるけれど、目の前のゲームで同点ゴールを奪いにくべきだったと思う。他会場でセネガルが追いついた場合、絶対に後悔するし、その可能性は決してゼロではなかった。自分たちで決められる可能性があるのならば、1点を取りに行くべきだったのではないだろうか。


他会場のゲームはコントロールできない。少なくともこの会場のゲームをコントロールすることに全力を注ぐべきだった。これはただのギャンブル。ピッチで戦っている選手には他会場の結果は分からない。指示を出した監督、コーチ陣には疑問を感じる。賭けに勝てばそれでいいのか、プライドはないのか。 これはあくまでも僕個人の意見。


ただ、フェアプレーポイントは今大会のルールであるし、反則ではない。現実を見れば、あの状況で日本が同点に追いつける可能性は極めて低く、セネガルが追いつかない可能性と天秤にかければ、今回のような決断になったのは必然かもしれない。


しかし、第3戦の前までグループ首位にいながら、博打に出なければならない状況にしてしまった時点で、この戦いは失敗だったのだ。初戦は運良く勝てたものの、セネガル戦で勝ちきれなかったこと。このゲームでの不可解なメンバー構成。酒井高徳と宇佐美貴史というバランスの取れない両翼。低調なパフォーマンスであった山口蛍を使い続けたこと。82分までの采配は失敗だったように思う。いや、間違いなく失敗だった。


最後の8分+アディショナルタイムは、この会場での可能性と、他会場での可能性を天秤にかけた上で、西野監督が全責任を背負う覚悟で腹を決めたということ。ただ、それだけ。今の日本チームには自力で突破を決められるほどの力はない。それを認めた瞬間だったように思う。


「本意ではなかった」と試合後の会見でも語っていたが、不本意でありながら、その決断をしなければならない日本サッカーの現実をみた気がする。フットボールは2割は美しいスポーツ。しかし、8割は美しくない。これも一つの現実。僕らは普段、その2割だけを見てきてしまったのかもしれない。頭の片隅ではその現実を分かってはいる。分かってはいるけれど、受け容れられないのかもしれない。


サッカーへの価値観の違いが今回の論争を生んでいる。感情論なのか、理論なのかもあるかもしれない。フットボールの美しさに魅了されてここまで来た。しかし、フットボールのひとつの現実をみた。美しさのカケラもないフットボールを。



酷い試合だった。
それでも、先へ進めた。
もう1試合戦える権利を得た。

ただ、それだけ。



 



 

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